野球の用語は独特
野球に興味のない人でも、実況中継などを聞いていてヘッドが走る、あるいはヘッドを走らせるといった表現を耳にしたことがあると思われます。
ヘッドが走るとはいったいどういうことだろうと思った人は、野球に関心がある人です。
興味のない人は聞き流してしまうでしょう。
ヘッドが走る、ヘッドを走らせるはどちらも同じことを指していますが、これを理解するには相対速度に関する知識が必要です。
時速100キロの球が飛んできたとき、この球の100キロを絶対速度と言います。
これにもう一つ、同じく100キロで飛んできた球があったとしたら、両者は同じスピードであることから、相対速度は0です。
ヘッドが走るというのは、この相対速度に差が生まれた状態のことを言い、要するにスピードの差といえます。
野球界では、この相対速度が生まれるときのことを走るという言葉で表現します。
バットと球の速度の差ではないことに注意
速度の差と聞くと、何キロの球を打ったかということだなと思ってしまう人もいるかもしれませんが、ヘッドが走るというときはバットと球の速度ではなく、グリップとヘッドを比較した相対速度の差です。
バットのヘッドがグリップの速度を追い越すことがヘッドを走らせるという状態であり、とかくインコースを打つのに適しています。
インコースは身体の近くに球が来るため、身体の近くでバットを操らなくてはなりません。
そのため、技術がないとどうしても詰まった打球になり、内野ゴロに終わってしまうことがほとんどです。
アウトコースを苦手にする選手は多いですが、同じくインコースを苦手にしている選手も多いのです。
上手く打てない理由は、身体の近くに来るからという心理的なこともありますが、ホームランバッターの多くはインコースに入ってきたボールを的確に捉えて長打にします。
つまり、インコースが苦手で打てないという状況を克服すれば、ヒットだけでなく長打も打てる打者になれるというわけです。
そこで、ヘッドを走らせるバッティングができることが求められるようになります。
ヘッドを走らせるのは力ではない
力任せのスイングでホームランが打てるほどの剛力を持ち合わせている選手は別ですが、そうでなければ力に頼っているだけではヒットはもちろんのこと、ホームランも生まれません。
特にインコースの球を打つには、ヘッドを走らせることが大事で、そのための練習方法をしっかりと行うことが大事です。
少年野球の指導でも、ヘッドを走らせてといった言い方は盛んに行われますが、子ども達が理解しているかといえば誰もわかっていないと言っても過言ではありません。
先にバットが走るということに関して、相対速度に対する理解が必要だと記述しましたが、もう一つ論理的なアプローチとして知っておきたいのが慣性の法則です。
慣性の法則とは物体がその場に留まろうとする力のことを言います。
一番わかりやすいのが、電車やバスに乗っているとき、乗客は乗り物の中では止まっていますが、電車やバスが急ブレーキをかけて止まった場合、止まっていた乗客は前へつんのめってしまいます。
これは慣性が働くことにより、身体がそれまでの状態と同じようにそのまま進もうとするためです。
これまで動いていた電車やバスは動いていた方向とは逆へ力が働いて止まるのに対し、中にいて動かずにいた人には前に進もうとする力が継続して働くのです。
これをバットのスイングに当てはめて考えると、トップの位置がヘッドの上にあり、その後の振り出でヘッドをギリギリまで残します。
慣性の法則によってヘッドを残せるとバットをボールに向けて最短距離で振ることができるのです。
ヘッドが残ると、インパクトした後は遠心力が増すことから、力強いスイングになるのが特徴です。
どのような練習をすればいいか
インコースを打つには身体の動きを俊敏にする必要がある
そのため、下半身はしっかりと踏ん張って体重移動を行いつつ、回転動作を早くすることがポイントです。
そのための練習としては、眉唾ものに思われることも多いものの、プラスチックのバットを使った素振りが効果的です。
これは科学的にも立証されており、取り組む価値はあるといえます。
通常、素振りの練習は重いマスコットバットが使われますが、この素振り練習では速いスイングを身につけることはできません。
重いバットを振って素振りをすると、いつものバットが軽く感じられて力が付いたように思えますが、実際にはスイングスピードは変わっていないという結果も証明されています。
それよりもむしろ軽いバットで速くスイングするコツを身体に覚えこませることによって、普通のバットでも速いスイングが可能になるのです。
まとめ
ヘッドを走らせるという言葉の意味を理解するには、いろいろなことを理解する必要があるため大人でも難しいので、とにかく軽いプラスチックバットを使い、ヘッドとトップの位置に注意しながら素振りを繰り返す練習が効果的です。
これにより、身体が速いスイングの動きを覚えこんでしまいますので、実際のバットを使ってもスイングスピードを速くしてインコースに対応できるようになります。
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